パソコンを入れ替えたら、会計ソフトが「前と違う」|データ以外に引き継ぐべきもの

パソコン・機器

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パソコンを新しくしたお客様から、しばらくしてこんな連絡をいただくことがあります。「帳簿のデータはちゃんと入っている。でも、なんだか前と入力のしかたが違って、仕事が進まない」。

データは無事に移っているので、パソコンの入れ替えとしては「成功」です。それでも、毎日その画面で仕事をしている人にとっては、指が覚えている操作が通じなくなるのは大きなストレスになります。この記事では、会計ソフト(弥生会計)の入れ替えを例に、データを移すだけでは引き継がれないものと、私が入れ替えの前にやっている準備を書きます。

何が起きるのか:データは戻るのに、操作感が戻らない

弥生会計のような業務ソフトは、パソコンを入れ替えるときに「バックアップを取って、新しいパソコンで復元する」という手順でデータを移します。帳簿の中身、つまり仕訳や科目や残高は、これできちんと戻ります。

ところが、ソフトの「環境設定」はこの手順では移りません。弥生会計の環境設定には、キー操作・入力、選択、表示、起動・終了、連携サービス、モジュールという6つのタブがあり、たとえば次のようなことを決めています。

  • Enterキーを押したときに、次の項目へ移動するかどうか
  • 勘定科目を探すときの「サーチキー」の入力方式(絞り込み型か、一致したものに飛ぶ型か)
  • サーチキーを前方一致で探すか、部分一致で探すか
  • 起動したときに、前回の事業所データを自動で開くかどうか
  • 終了するときに自動でバックアップを取るかどうか、何世代残すか

どれも、最初に誰かが使いやすいように変えて、そのまま何年も使い続けている設定です。変えた本人も、変えたことを覚えていないことがほとんどです。新しいパソコンでは、これが全部買ったときの初期状態に戻ります。その結果、「データはあるのに、前と同じように入力できない」という状態になります。

原因:設定とデータは、保存されている場所が違う

入れ替えでつまずく原因は、今回の事例では3つありました。

つまずく点なぜ起きるか起きること
環境設定が戻らない環境設定はWindowsのユーザーごとの領域(ユーザープロファイルやレジストリ)に保存されていて、事業所データのバックアップには含まれない入力や表示のしかたが初期状態に戻る
バックアップの保存先が無効になるバックアップの保存先がOneDriveの中に設定されていた。新しいパソコンでユーザー名が変わると、その場所を指す道筋(パス)が成り立たなくなる自動バックアップが保存されない・見つからない
ライセンス認証が通らない古いパソコンの認証を解除しないまま新しいパソコンで認証すると、持っているライセンスの数を超える新しいパソコンで使い始められない

3つ目のライセンスについて、今回のパソコンで過去の認証の履歴を見たところ、何年も前に使っていた別のパソコンの名前が複数残っていました。以前の入れ替えのときに解除されていたのかどうか、画面だけでは分からないこともあります。だからこそ、入れ替えの当日に慌てないよう、先に確認しておく必要があります。

現場でやったこと:入れ替えの前に、全部を記録する

このお客様では、入れ替えの後で困るのではなく、入れ替えの前に今の状態を全部記録しておくことにしました。やったことは次のとおりです。

  1. 今のパソコンで、環境設定の6つのタブをすべて撮影する。あわせて「ヘルプ → バージョン情報」の画面と、ライセンス認証の状況も撮影しました
  2. 撮影した内容を「環境設定の記録シート」にまとめる。全部の設定値を表に書き写し、印刷できる1枚の資料にしました。入れ替えの作業チェックリストも同じ資料に載せています
  3. 入れ替え当日の手順を決めておく。次の表のとおりです
順番作業ねらい
1古いパソコンで、ライセンス認証を解除するライセンスの数を超えないようにする
2事業所データを手動でバックアップする(終了時の自動バックアップとは別にもう1本)移行に使うデータを確実に手元に残す
3新しいパソコンにインストールし、製品登録番号で認証する正式に使える状態にする
4所得税の確定申告モジュールを入れる(入っていた年分をすべて)前と同じ機能を使えるようにする
5記録シートを見ながら、環境設定を手で再現する操作感を元に戻す
6バックアップの保存先を、新しいパソコンの場所に指定し直す自動バックアップが正しく残るようにする

記録を取るときに気づいたことがあります。環境設定の「選択」タブには、帳簿や伝票で選択リストを自動で出すかどうかを決める欄があるのですが、画面の写真では値が読み取りにくいものがありました。写真だけに頼らず、こうした欄は実際のパソコンで1つずつ確かめる必要があります。

もう1つは、確定申告のモジュールです。このパソコンには複数の年分が入っていました。新しいパソコンに最新の年分だけを入れると、前の年分の申告を見直したいときに困ります。何年分が入っているかも、記録に残しておきます。

入れ替えの前に確認しておくこと

弥生会計に限らず、業務ソフトの入った会社のパソコンを入れ替えるときは、次のことを事前に確かめています。

確認すること理由
製品登録番号・お客様番号の控えがあるか新しいパソコンで認証するときに必要。見つからないと当日止まる
ライセンスの数と、今認証しているパソコンの台数残りがなければ、先に古いパソコンの認証を解除する必要がある
同じメーカーの別のソフト(給与ソフトなど)も使っていないかソフトごとに登録番号や契約が別になっていることがある
バックアップの保存先がOneDriveなどの同期フォルダの中ではないか新しいパソコンでは場所が変わり、保存先の指定し直しが必要になる
追加の機能(申告モジュールなど)が何年分入っているか最新だけを入れると、過去の分が見られなくなる
環境設定の画面をすべて記録したかデータの復元では戻らない

特にバックアップの保存先は見落としがちです。OneDriveのように自動で同期するフォルダの中にバックアップを置いていると、入れ替えや、OneDriveの設定を変えたときに、保存先がずれてしまいます。バックアップが「取れているつもり」で実は取れていない状態は、バックアップが「あるのに使えない」3つの型でも書いた、よくある落とし穴のひとつです。

同じことで困らないために

パソコンの入れ替えを「データを移す作業」だと考えると、今回のような操作感の問題は必ず後から出てきます。私は入れ替えを、「データ」「設定」「権利(ライセンス)」の3つを移す作業だと考えるようにしています。

  • データ:ソフトのバックアップ機能で移す。手動でもう1本取っておく
  • 設定:画面を撮影・記録して、新しいパソコンで手で再現する
  • 権利:古いパソコンで解除してから、新しいパソコンで認証する

記録シートは、次の入れ替えのときにもそのまま使えます。パソコンは数年ごとに必ず入れ替えるものなので、一度作っておけば、次からは確認するだけで済みます。会社で何台もパソコンを使っているなら、パソコンの台帳と一緒に保管しておくと探す手間もかかりません。入れ替えるパソコンをどう選ぶかは、会社のパソコンは新品・リース・中古のどれにするかにまとめています。

なお、今回のお客様にはこう説明しました。「帳簿のデータはそのまま引き継げます。ただ、Enterキーで項目を移動するといった操作の設定は初期状態に戻ってしまうので、今の設定を全部記録して、新しいパソコンで同じように戻せるようにしました」。事前にこう伝えておくと、入れ替えの後の「前と違う」という戸惑いもずいぶん減ります。

(PR)入れ替え用のパソコンの購入先の一例

入れ替え用のパソコンを中古で用意する場合の購入先の一例です。業務ソフトを入れるパソコンは、そのソフトが対応しているWindowsのバージョンと、必要なメモリ・ディスクの量を先にメーカーのサイトで確かめてから選んでください。

まとめ

  • 会計ソフトのデータはバックアップの復元で戻るが、環境設定(操作感)は戻らない
  • バックアップの保存先がOneDriveの中にあると、新しいパソコンで保存先の指定し直しが必要になる
  • ライセンスは古いパソコンで解除してから新しいパソコンで認証する
  • 入れ替えの前に、設定画面をすべて撮影して記録シートにまとめておく。写真で読みにくい欄は実機で確かめる
  • 入れ替えは「データ」「設定」「権利」の3つを移す作業と考える

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