「昨日まで普通に印刷できていたのに、今日はプリンターが『オフライン』になっていて印刷できません」
保守の仕事をしていると、このご連絡は本当によくいただきます。プリンターの電源は入っている。紙もインクもある。ケーブルも抜けていない。それでもパソコンからは「オフライン」に見える。こういうとき、原因の多くはプリンターの故障ではなく、ネットワーク上の「住所」が食い違っていることです。
この記事では、最近続けて対応した2つの事例をもとに、なぜ住所が食い違うのか、現場でどう見つけてどう直したのかを書きます。1つは「プリンターの住所が変わった」ケース、もう1つは「ルーターを替えて、事務所全体の住所の番号帯が変わった」ケースです。症状は同じでも、直す場所が違います。
そもそも「住所」とは何か
社内のネットワークにつながる機器には、それぞれIPアドレスという番号が割り当てられています。郵便でいう住所のようなもので、パソコンは「この住所のプリンターに印刷データを送る」という形で印刷しています。
住所の決まり方は2通りあります。ルーターが空いている番号を自動で配る方法(DHCP)と、機器ごとに番号を固定しておく方法です。自動で配る方法は手間がかかりませんが、電源を入れ直したタイミングなどで、別の番号に変わることがあります。ここが今回の1つ目の事例の出発点です。
IPアドレスの重複や、住所が決まらないトラブルについては「1台だけネットが遅い・つながらない|原因はIPアドレスの重複かもしれません」でも書いています。
事例1:プリンターの住所が自動で変わり、パソコンが見失った
何が起きたか
あるお客様で、デスクトップとノートの2台のパソコンから、インクジェットの複合機に印刷できなくなりました。どちらのパソコンでも、プリンターが「オフライン」と表示されていました。
調べて分かったこと
リモートでパソコンにつないで確認すると、印刷を受け付けるWindowsの仕組み(スプーラー)は正常に動いていました。問題はその先です。
- パソコン側のプリンターの設定は「WSD」という、プリンターを自動で見つけてつなぐ方式になっていた
- その設定が覚えている住所は古いもので、今のプリンターの住所ではなかった。しかも古い住所は、すでに別の機器が使っていた
- 社内のネットワークを探して、印刷を受け付ける窓口が開いている機器を探すと、該当するのは1台だけだった。その機器の識別番号の末尾がパソコン側の設定に残っていたプリンター名の末尾と一致し、機器の設定画面にもメーカー名が表示されていたので、これが探していたプリンターだと特定できた
- ノートパソコンには同じプリンターが2つ登録されていて、普段使っていた方は古い住所を探しに行っていた。もう1つの方はプリンターの名前でつなぐ設定になっていて、こちらは正常に使えた
つまり、プリンターの住所が自動の割り当てで何度か変わり、パソコン側の自動接続の設定がそれに追いつけなかったのが原因です。プリンターの住所が固定されていなかったので、電源を入れ直すたびに変わり得る状態でした。
現場でやったこと
- 変更前の設定をバックアップする。2台とも、プリンターの一覧、プリンターの設定、自動接続の設定をファイルに書き出して保存しました。何かあればここから元に戻せます。
- プリンターの今の住所に直接つなぐ設定を追加する。自動で探す方式ではなく、住所を指定して送る方式(標準TCP/IPポート)の接続先を新しく作りました。
- 普段使っているプリンターの接続先を切り替える。プリンターを登録し直すのではなく、接続先だけを差し替えたので、用紙や印刷品質などの設定はそのまま残ります。
- テストページを印刷して確認する。2台とも、テストページが送られて印刷まで完了し、状態が「正常」に戻ったことを確かめました。
- プリンターの住所を固定する。お客様のスタッフの方に、プリンター本体の住所を今の番号で固定していただきました。これで、電源を入れ直しても住所が変わらなくなります。
このとき、FAX送信用のプリンター(パソコンからFAXを送るための登録)は古い設定のまま残っていました。印刷とFAXは別々に登録されていることが多いので、片方を直したらもう片方も確認が必要です。ノートパソコンでは、名前でつなぐ方のFAX登録なら使える状態でした。
事例2:ルーターを替えたら、事務所全体の番号帯が変わった
何が起きたか
別のお客様では、回線事業者のルーターを交換した翌日から、事務所のパソコンから複合機に印刷できなくなりました。印刷データは「印刷待ち」のまま止まっています。インターネットは問題なく使えていました。
調べて分かったこと
こちらは事例1とは逆で、プリンターの住所は固定されていて、変わっていませんでした。変わったのはパソコンの方です。
住所には「番号帯」があります。郵便でいえば町名のようなもので、同じ町名の中の機器どうしでなければ直接やり取りできません。新しいルーターは工場出荷時の番号帯のまま設置されていて、以前のルーターとは町名が違っていました。パソコンは新しいルーターから新しい町名の住所をもらったのに、複合機は古い町名の住所で固定されたまま。だから、パソコンから複合機に届かなくなっていたのです。
現場でやったこと
- 以前の番号帯を確認する。パソコンの今の住所、パソコン側のプリンター設定にある複合機の住所、交換前の環境の番号帯を並べ、新しい番号帯の中を探しても複合機が見つからないことを確かめました。これで「町名が変わった」ことがはっきりしました。
- ルーターの社内側の番号帯を、以前と同じに戻す。お客様のパソコンを経由してルーターの管理画面を開き、設定を変更しました。
- パソコンが住所を取り直したことを確認する。パソコンが以前と同じ番号帯の住所をもらい直し、複合機まで届くことを確かめました。
- テストページを印刷する。止まっていた印刷待ちが解消し、テストページも正常に印刷されました。
この直し方のよいところは、パソコン側の設定を1台も変えずに済んだことです。複合機の住所を新しい番号帯に合わせ直す方法もありますが、そうするとすべてのパソコンの設定を直す必要があり、ほかにも固定の住所で使っている機器があればそれも全部やり直しになります。
このとき、あるノートパソコンの有線LANに、手で設定した住所が残っているのも見つかりました。ケーブルはつながっていなかったので今回の原因ではありませんが、ルーターが自動で配る範囲と重なっていると、将来つないだときに住所がぶつかる恐れがあるため、確認をお願いしました。
ルーターの交換で引き継がれない設定は、番号帯だけではありません。外から防犯カメラを見る設定が消えてしまった事例を「ルーターを新しくしたら、外から防犯カメラが見えない」に書いています。
2つの事例を比べると
| 事例1:プリンターの住所が変わった | 事例2:ルーターの番号帯が変わった | |
|---|---|---|
| きっかけ | 特になし(自動の割り当てで変わった) | ルーターの交換 |
| プリンターの住所 | 自動で変わっていた | 固定で、変わっていない |
| パソコンの住所 | 変わっていない | 新しい番号帯に変わった |
| インターネット | 使える | 使える |
| 直した場所 | パソコン側の接続先とプリンターの住所の固定 | ルーターの番号帯を元に戻す |
どちらも「インターネットは使えるのに、印刷だけできない」という同じ見え方です。違いを見分けるには、直前にルーターを替えたり、停電や電源の入れ直しがなかったかを聞くのがいちばんの近道です。
同じことを防ぐには
プリンターや複合機の住所は固定する
複数の人が使う機器は、住所を固定しておくのが基本です。固定の方法は、プリンター本体で設定するほか、ルーター側で「この機器にはいつもこの番号を配る」と予約する方法もあります。どちらにしても、ルーターが自動で配る範囲と重ならない番号を使うことが大切です。
パソコン側は「住所を指定してつなぐ」設定にする
Windowsが自動で見つけてくれる接続方式は便利ですが、住所が変わったときに追いつけないことがあります。業務で毎日使うプリンターは、住所を指定してつなぐ方式に切り替えておくと安定します。
ルーターを替える前に、今の設定を控える
ルーターの交換は、回線事業者の工事や故障対応で、こちらの知らないうちに行われることもあります。交換の前に、少なくとも次の3つは控えておいてください。
- 社内側の番号帯(ルーター自身の住所)
- 自動で配る番号の範囲
- 住所を固定している機器の一覧(複合機、NAS、防犯カメラなど)
新しいルーターを同じ設定にしてから入れ替えれば、今回の事例2は起きません。私たちは、お客様ごとにこうした設定を台帳に残すようにしています。
まとめ
- プリンターが「オフライン」でインターネットは使えるとき、原因の多くは住所の食い違い
- プリンターの住所が自動で変わった場合は、パソコン側の接続先を今の住所に直し、プリンターの住所を固定する
- ルーターを替えて番号帯が変わった場合は、ルーター側を以前の番号帯に戻せば、パソコンを1台ずつ直さずに済む
- 設定を変える前に、元に戻せるようバックアップを取る。FAX用の登録も忘れずに確認する
- ルーター交換の前には、番号帯・自動で配る範囲・固定の機器を控えておく
プリンターの「オフライン」は、プリンターを買い替える前に確かめられることがたくさんあります。故障を疑う前に、住所が合っているかを一度見てみてください。
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