パソコンが起動しない。メモリを抜き差ししたら直った|それで終わりにしないための点検

パソコン・機器

「パソコンの電源を入れても起動しなくなりました。中のメモリを抜いて差し直したら、なぜか直りました。これで大丈夫でしょうか?」

最近、あるお客様からこんなご相談をいただきました。自分で直せたのは素晴らしいことです。ただ、保守の立場から言うと「直った」で終わらせてしまうと、同じことがまた起きたときに慌てることになります。なぜ起動しなくなったのか、なぜ抜き差しで直ったのか、次に起きないようにするには何をすればいいのか。この記事では、そのときに私がパソコンの記録を調べて分かったことと、実際にやった対応を順番に書きます。

何が起きたか:電源を入れても立ち上がらない

対象は、Windows 11 のメーカー製デスクトップパソコンです。性能としては事務作業に十分な世代のものです。メモリ(作業用の記憶部品)は8GBのものが1枚だけ差さっていて、差し込み口(スロット)は2つあります。つまり、1つは空いている状態です。

ある日、電源を入れても起動しなくなりました。お客様が本体を開けてメモリを一度抜き、差し直したところ、起動するようになったそうです。そこで「原因は何だったのか」「また起きないか」を確認してほしい、というご依頼でした。

私はリモートでパソコンにつなぎ、Windowsが残している記録(イベントログ)と、部品の状態を確認しました。

記録から分かったこと

Windowsは、起動や終了がうまくいかなかったときに、その様子を記録に残しています。見ていくと、次のことが分かりました。

記録に残っていたこと読み取れること
起動時に「高速スタートアップからの復帰に失敗した」という記録が2回前回の状態を保存しておいて素早く立ち上げる仕組みが、うまく働かなかった。メモリを抜き差しした直後によく出る記録
その数日前に「正常に終了しないまま電源が切れた」という記録が1回停電、コンセントやタップの抜け、電源ボタンの長押しなどで電源が落ちた可能性
ハードウェアのエラーの記録は、直近90日で0件部品が壊れかけているという強いサインは出ていない
メモリの診断を実行した履歴はなしメモリ自体の良し悪しはまだ確かめられていない
青い画面(ブルースクリーン)は、以前に1回だけ頻繁に落ちているわけではない
SSD・HDD・外付けHDDはすべて「正常」保存装置の故障ではない
BIOS(本体の基本プログラム)が数年前の版のままメーカーの最新版に更新されていない

ここで大事なのは、Windowsや保存装置に異常は見つからなかったということです。「データが壊れたのでは」と心配される方が多いのですが、今回はその心配はありませんでした。

原因:メモリと差し込み口の「接触不良」が最も疑わしい

記録と状況を合わせると、原因の候補は次の順になります。

  1. メモリと差し込み口の接触不良。埃や端子の酸化、振動などで接触が甘くなると、電源を入れても部品を正しく認識できず起動しないことがあります。抜き差しで直ったという事実と、いちばんよく合います。このお客様は作業場にパソコンを置いていて、埃が多い環境でした。
  2. メモリそのものの劣化。抜き差ししても再発するようなら、こちらを疑います。
  3. BIOSが古いことによる、メモリの認識の不安定さ。これは主な原因というより、補助的な要因として考えています。

なお、「高速スタートアップからの復帰に失敗した」という記録は、メモリを抜き差しした直後によく出るものです。部品の構成が変わったので、保存しておいた前回の状態がそのまま使えなかった、ということです。これ自体は故障ではありません。ただ、接触が微妙な状態のときに、この「前回の状態から素早く復帰する」動きがつまずきの原因になることがあります。

現場でやったこと

その場で(リモートで実施)

  1. 変更する設定のバックアップを取る。電源まわりの設定を変える前に、元に戻せるよう設定をファイルに書き出して保存しました。お客様のパソコンの設定を変えるときは、必ず先に戻し方を用意しておきます。
  2. 高速スタートアップを無効にする。電源を切ったときに前回の状態を保存せず、毎回まっさらな状態から部品を確認して起動するようにしました。起動が数秒遅くなる程度で、普段の使い勝手はほとんど変わりません。この変更は再起動しなくても反映されます。

次にやること(お客様にご提案)

  1. Windowsのメモリ診断を実行する。Windowsに標準で入っている診断で、メモリ自体に不良がないかを確かめます。再起動を伴い、10〜20分ほどかかるので、業務の空いている時間に行います。
  2. メモリの差し込み口を変える、または1枚追加する。空いているもう1つの差し込み口に差し替えて様子を見るか、同じ規格の8GBをもう1枚追加して合計16GBにします。2枚にすると処理が速くなるうえ、片方の接触が悪くなっても起動できる余地が生まれます。
  3. 本体内部の埃を清掃する。埃の多い環境では、これだけでも再発の可能性を下げられます。
  4. BIOSをメーカーの最新版に更新する。部品の認識が安定することがあります。

そして、それでも再発するようなら、メモリを交換して確定させます。メモリは、パソコンの部品の中では比較的安価で、交換も短時間で済みます。

「抜き差しで直った」をどう受け止めるか

抜き差しで直ったのは、たまたまではありません。接触不良が原因だったことを示す、いちばん分かりやすい手がかりです。一方で、接触が悪くなった理由(埃や端子の状態)はそのまま残っているので、時間がたてば同じことが起きる可能性があります。

起動しないトラブルは、朝いちばんや、急いでいるときに限って起きます。そのとき「前にもあった。メモリを差し直せば直る」と分かっていれば落ち着いて対処できますし、何度も起きるなら交換すればいいと判断できます。今回の調査は、その判断の材料をそろえるためのものでした。

同じことを防ぐには

対策目的手間
高速スタートアップを無効にする毎回まっさらな状態から起動させ、復帰のつまずきを避ける小(設定のみ)
メモリを2枚構成にする処理の改善と、片方が不調でも起動できる余地中(部品代+作業)
本体内部の定期清掃接触不良の原因になる埃を減らす中(年1回程度が目安)
BIOSの更新部品の認識を安定させる中(更新前の準備が必要)
電源ケーブルとタップの点検「正常に終了しないまま電源が切れた」原因の切り分け小

BIOSを更新するときは、ひとつ注意があります。ドライブの暗号化(BitLocker)が有効になっているパソコンでは、更新のあとに「回復キーを入力してください」という画面が出ることがあります。回復キーがすぐに出せない状態で更新するのは危険です。事前に回復キーの控えがあるかを確認してから作業してください。回復キーについては「突然『BitLocker回復キー』の画面が出て起動しない」で詳しく書いています。

また、もし次に起動しなくなったときは、次の点を見ておいていただけると原因の切り分けが早くなります。

  • 電源を入れたとき、メーカーのロゴまで表示されるか
  • 「ピッ」という音や、ランプの点滅に決まったパターンがあるか(メーカーごとに意味が決まっています)
  • 直前に停電やコンセントの抜けがなかったか

メモリの容量そのものについては、「『パソコンが重い』と言われたとき、現場で最初に確かめること」でも書いています。8GBで十分だった時代の感覚のまま使っているパソコンは多く、今回のように1枚追加すると、起動の安定と動作の軽さの両方につながることがあります。

まとめ

  • メモリの抜き差しで起動が直ったなら、原因は接触不良の可能性が高い。ただし、接触が悪くなった理由は残っている
  • 今回はWindowsや保存装置に異常はなく、データの心配はなかった
  • その場では、設定をバックアップしてから高速スタートアップを無効にした
  • 次の手として、メモリ診断、差し込み口の変更または1枚追加、内部清掃、BIOS更新を提案した
  • それでも再発するなら、メモリを交換して確定させる

「直ったから様子見」は悪い判断ではありません。ただ、記録を一度見ておくだけで、次に起きたときの判断がずっと楽になります。気になる症状があれば、直ったあとでも一度ご相談ください。

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