複合機からパソコンへのスキャン保存ができない|原因は2つ重なっていました

サーバー・NAS

「複合機でスキャンした書類が、パソコンのフォルダに保存されなくなりました。いつからかは、はっきり分かりません」

複合機のスキャン保存は、毎日使うわりに設定を誰も覚えていない機能の代表です。導入したときに業者が設定して、そのまま何年も動いている。止まって初めて「どこに保存していたんだっけ」となります。

最近対応した事例では、原因が2つ重なっていました。1つ直しても保存できず、もう1つを直して初めて保存できるようになったのです。この記事では、そのとき何を見て、どの順番で直したかを書きます。

何が起きたか

ある事務所で、複合機から1台のWindows 11パソコンの共有フォルダに、スキャンした書類を保存する運用をしていました。NASやサーバーではなく、普段使っているパソコンの中にスキャン用のフォルダを作り、それを社内に共有している形です。小さな事務所では、よくある構成です。

このスキャン保存が、いつの間にかできなくなっていました。保存先のフォルダを見ると、最後に保存されたファイルの日付は数か月前で、それ以降は1件も増えていませんでした。あわせて、社内のほかのパソコンからこのパソコンに通信の確認(ping)をしても、応答がありませんでした。

複合機の宛先には、ユーザー名としてパソコン利用者のMicrosoftアカウント(メールアドレスの形のもの)が登録されていました。

1つ目の原因:ネットワークの種類が変わり、防火壁が通信を止めていた

Windowsは、つながっているネットワークを「パブリック(外のネットワーク)」と「プライベート(自宅や社内のネットワーク)」に分けて扱います。そして種類ごとに、Windowsファイアウォール(防火壁)でどの通信を通すかを別々に決めています。

調べてみると、このパソコンのネットワークは以前「パブリック」として扱われていて、途中で「プライベート」に切り替わっていました。Windowsの記録に、その切り替わりが残っていました。そして、ファイルの共有を受け付ける規則(「ファイルとプリンターの共有」)は、パブリック側では有効、プライベート側では無効になっていました。

つまり、ネットワークの種類が切り替わった時点で、複合機からの保存の通信が防火壁で止められるようになっていた、ということです。ほかのパソコンからの通信確認に応答しなかったのも、同じ理由です。

ネットワークの種類は、Wi-Fiの設定を作り直したり、つなぎ直したりしたときに変わることがあります。ネットワークの名前の末尾に番号が増えているときは、Windowsがそれを「新しいネットワーク」として扱っているサインです。

やったこと

  1. プライベート側の「ファイルとプリンターの共有」を有効にしました。Windowsの設定画面にあるトグルを入れるのと同じ内容です。
  2. ほかのパソコンから通信確認をして、応答が返るようになったことを確かめました。

これで直ったと思って複合機からスキャンしてみると、今度は複合機の画面に「アカウント名と認証先のパスワードが無効」と表示されました。

2つ目の原因:アカウントが「パスワードを受け付けない」設定だった

エラーの文言が変わったのは、実は前進です。複合機の表示は大きく分けて次の2種類で、どちらが出るかで見る場所が変わります。

複合機の表示起きていること見る場所
「接続できません」などパソコンまで通信が届いていない防火壁、ネットワークの種類、宛先のパスや住所
「アカウント名・パスワードが無効」などパソコンには届いたが、入る資格が認められていない宛先のユーザー名とパスワード、アカウントの種類

パソコン側の記録を見ると、複合機がスキャンを試すたびに、「ゲスト」としてのログオンが記録されていました。複合機が送ったユーザー名とパスワードが通らず、身元の分からない来客として扱われていた、ということです。

原因は、このパソコンが「Windows Hello サインインのみを許可する」という設定になっていたことでした。顔認証やPINだけでサインインする、パスワードを使わない設定です。セキュリティの面では良い設定ですが、この状態では、ネットワーク越しにMicrosoftアカウントのパスワードで入ろうとしても認証が通りません。複合機は、まさにこのパスワードでの入り方をしていました。

やったこと

  1. スキャン専用のローカルアカウントを作る。そのパソコンの中だけで使うアカウントを新しく作り、パスワードは期限切れにならない設定にしました。Microsoftアカウントとは切り離されているので、パスワードを使わない設定の影響を受けません。
  2. 複合機のアドレス帳の宛先を変更する。ユーザー名を新しいスキャン専用アカウントにし、パスワードを入れ直して登録しました。保存先のフォルダの場所はそのままです。
  3. スキャンして保存できることを確認する。保存先のフォルダにファイルができたことを確かめました。過去に保存したファイルも、そのまま残っています。

スキャン専用のアカウントは、設定によってサインイン画面に表示させないこともできます。社員の方が「知らないアカウントがある」と戸惑わないよう、必要に応じて調整します。

関係なかったもの(確認して除外したこと)

スキャン保存が止まったときは、いろいろな原因が考えられます。今回は、次のものも順に確認して、どれも問題がないことを確かめてから上の2つに絞りました。

確認したこと結果
古い共有の方式(SMB1)が無効になっていないか無効だったが、この複合機は新しい方式で送るため無関係
通信の署名を必須にする設定必須になっていたが、無関係
共有フォルダとフォルダそのものの権限正常
共有を受け付けるサービスが動いているか正常
パソコンの名前がネットワーク上で解決できるか正常

また、セキュリティソフトの一覧に、以前入っていたソフトの防火壁の登録が残っていましたが、実体はなく、名前だけの残骸でした。こうした「それらしいもの」に飛びつかず、一つずつ確かめていくのが遠回りに見えて近道です。

なお、2つの原因がどの順番で効き始めたのかまでは、記録からは言い切れませんでした。確かなのは、両方を直して初めて保存できるようになった、ということです。

同じことを防ぐには

複合機の宛先に、個人のMicrosoftアカウントを使わない

今回の一番の教訓はこれです。個人のアカウントは、本人がパスワードを変えたり、パスワードを使わない設定にしたりした時点で、複合機からの保存が止まります。本人は複合機のことまで意識していませんから、つながりに気づきません。スキャン保存には、そのための専用アカウントを用意し、パスワードは期限切れにならない設定にしておくのが安全です。

止まったら、まずネットワークの種類と防火壁を見る

ネットワークの種類は、本人が気づかないうちに変わります。スキャン保存や共有フォルダが急に使えなくなったら、まず「このネットワークはプライベートになっているか」「プライベート側でファイルの共有が許可されているか」を確認してください。

使っていないゲストのアカウントは止めておく

今回、複合機の試行がゲストとして記録されていたことで、ゲストのアカウントが有効なままだと分かりました。ほかで使っていなければ、無効にしておくほうが安心です。

保存先のフォルダの日付を、ときどき見る

今回は、最後のファイルの日付から数か月がたってからのご相談でした。月に一度でも保存先を開いて、最新のファイルの日付を見ておくと、止まったことに早く気づけます。

共有フォルダに入れないトラブル全般については、「共有フォルダに入れない|1台だけか全員かで、見る場所が変わります」にまとめています。共有名・ユーザー名・パスワード・権限の基本の確認は、そちらも参考にしてください。

まとめ

  • 今回の原因は2つ。ネットワークの種類が変わって防火壁が保存の通信を止めていたことと、宛先のアカウントがパスワードを受け付けない設定だったこと
  • 複合機の表示が「接続できません」か「アカウント・パスワードが無効」かで、見る場所が変わる
  • 防火壁を開けたあと、スキャン専用のローカルアカウントを作って宛先を変更し、保存できるようになった。保存先と過去のファイルはそのまま
  • 複合機の宛先に個人のMicrosoftアカウントを使わない。パスワードの変更やパスワードレス化で止まる
  • 止まったら、まずネットワークの種類と防火壁を確認する

スキャン保存は、止まると紙の書類が机に積み上がっていく、地味ですが困るトラブルです。設定を誰も覚えていない場合は、一度どこに保存しているか、どのアカウントを使っているかを書き出しておくだけでも、次に止まったときの対応がずっと早くなります。

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