朝、出社した社員の方から「共有フォルダに入れません」と言われる。中小企業の現場で、おそらく最も回数の多いトラブルです。見積書も図面も請求書も共有フォルダの中にあるので、入れなければ仕事が止まります。
ところが「入れない」の一言の裏には、まったく別の原因がいくつも隠れています。画面に出るメッセージがどれも似ているせいで、見分けが付きにくいのです。私が現場で使っている切り分けの順番を書いておきます。
最初の質問は「何台が入れないか」
伺う前の電話で、まずこれを聞きます。ここで原因の探す場所が半分に絞れるからです。
| 状況 | 疑う場所 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1台だけ入れない(ほかは入れる) | そのパソコン側 | 共有元は動いている。保存されている接続情報やログイン情報が怪しい |
| 全員が入れない | 共有元の機器とネットワーク | 電源、本体の不調、番号(住所)の変更、権限の変更を先に見る |
| 一部の人だけ入れない | 権限の設定 | その人のアカウントに読み書きの許可があるか |
| 昨日までは入れた | 直前の変更 | 更新、パスワード変更、機器の再起動、入替など |
利用者の方は「急に入れなくなった」とおっしゃいますが、たいてい直前に何かしらの変更があります。責めるつもりで聞くのではなく、心当たりを思い出していただくために聞きます。
ケース1|1台だけ入れない。原因は「古い接続が残っていた」
あるお客様先で、1台のパソコンだけ共有フォルダに入れなくなりました。画面には「このネットワークリソースを使用するアクセス許可がない可能性があります」と出ていて、続けて「サーバーまたは共有リソースへの複数のユーザー名での複数の接続は許可されません」という表示が出ていました。Windowsのエラー番号でいうと1219です。
一見すると権限の問題に見えますが、これは違います。同じ共有元に対して、1台のパソコンから別々のユーザー名で同時につなごうとしているという意味です。Windowsはこれを許しません。
なぜそんな状態になるのか。多いのは次の2つです。
- スリープから復帰したときに、前の接続が切れきらずに残っている
- 遠隔操作のソフトで入ったセッションと、その場で使っているセッションが別々に接続している
このときの対応は単純です。コマンドプロンプトで既存の接続をすべていったん切断し、つなぎ直すだけで解消しました。
- コマンドプロンプトを開き、
net useと入力して、今どんな接続が残っているかを一覧で見る net use * /deleteで残っている接続をすべて切断する- 共有フォルダをもう一度開く
- それでも直らなければ、コントロールパネルの資格情報マネージャーを開き、Windows資格情報から共有元に関する古い登録を削除する
4番目の資格情報マネージャーは、あまり知られていませんが重要です。Windowsは一度入力したユーザー名とパスワードを覚えていて、間違ったまま覚えていることがあります。正しいパスワードを入力する機会すら与えられないまま「入れません」になるので、利用者の方には原因がまったく見えません。
ケース2|「ネットワークエラー(1208)」と出る
もうひとつ、よく出るのが「ネットワーク エラーです(1208)」という表示です。こちらは1219と違って、原因がひとつに決まりません。可能性の高い順に並べると次のようになります。
- 保存されているユーザー名・パスワードが間違っている(以前の情報が残っている場合に多い)
- 共有元のフォルダ権限、またはそのユーザーの権限が足りない。フォルダが見えていても、読み書きの許可がなければ入れません
- 共有元の機器の番号が変わった、または電源が入っていない
- Windows側のネットワーク探索・ファイル共有の設定が無効になっている。更新の後やネットワークの種類が切り替わった後に起きます
- 通信方式(SMB)の世代が合っていない。古いNASや複合機で関係することがあります
5番目については補足が必要です。古い方式をわざわざ有効に戻せばつながることがありますが、その方式は安全性に問題があるため、常時有効にするのは避けるべきです。現場では最終手段として扱い、まずは共有元の機器を新しい世代に対応させる方向で考えます。ランサムウェアの被害が広がる経路にもなり得ます。
現場での確認手順
- 共有元に応答があるか確認する。
pingで共有元の番号に応答があれば、機器はネットワーク上に存在しています。応答がなければ、電源・配線・番号の変更のほうを先に見ます。 - 資格情報マネージャーを開き、共有元に関する保存済みの登録を削除する。
- もう一度アクセスし、正しいユーザー名とパスワードを入力する。
- 共有元の側で、そのユーザーに読み取り・書き込みの許可があるか確認する。
- Windowsの共有設定を確認する。ネットワーク探索がオン、ファイルとプリンターの共有がオン、ネットワークの種類がプライベートになっているか。
確認に使うコマンドは、覚えるとしたらこの4つで足ります。
| 目的 | コマンド |
|---|---|
| 共有元に届くか確認する | ping 共有元の番号 |
| 共有されているフォルダの一覧を見る | net view \\共有元の番号 |
| 今つながっている接続を確認する | net use |
| 残っている接続を切断する | net use * /delete |
問い合わせる前に用意していただきたい情報
保守を任せている業者へ連絡するとき、次が分かっていると復旧が早くなります。電話口で往復するやり取りが、そのまま止まっている時間になるからです。
- 共有元が何か(サーバー、NAS、普通のパソコン、複合機のいずれか)
- 共有フォルダの名前
- そのパソコンで以前は入れていたか
- ほかのパソコンからは入れるか
- 最近の変更点(Windowsの更新、パスワード変更、機器の再起動、入替など)
特に「ほかのパソコンからは入れるか」は、その場で1台試していただくだけで、探す範囲が半分になります。
複合機のスキャン保存先が急に使えなくなったとき
複合機でスキャンした書類を共有フォルダに保存している会社は多いと思います。これが急に失敗するようになったときは、共有名・ユーザー名・パスワード・フォルダの権限の4点を順に見ます。
原因で多いのは、保存先のパソコンのパスワードを変更したというものです。人が使う分には何も変わらないので、変更した本人も結び付けて考えません。複合機の中には古い設定が残ったままなので、複合機からだけ入れなくなります。パソコンのパスワードを変えるときは、そのパソコンが何かの保存先になっていないかを一度考えてみてください。
日頃からやっておきたいこと
- 共有元の機器の番号を固定しておく。自動で割り当てられたままだと、再起動のたびに変わる可能性があります。ルーター側で予約しておくのが確実です
- どのフォルダに誰が入れるかを一覧にしておく。担当者が退職すると、誰も分からなくなります
- 共有フォルダの中身はバックアップの対象に入れる。共有元が1台しかない会社が大半で、その1台が止まれば全社が止まります
3番目について補足します。共有フォルダに入れないというトラブルの怖いところは、機器の故障と、権限や設定の問題が、利用者からは同じに見える点です。今回のように設定で直ることもあれば、共有元のディスクが寿命で読めなくなっていることもあります。後者だったときに何が残るかは、日頃の備えでしか決まりません。
まとめ
- 最初に聞くのは「何台が入れないか」。1台ならそのパソコン側、全員なら共有元
- 「複数のユーザー名での複数の接続は許可されません」は権限の話ではなく、古い接続が残っているという意味
- 1台だけ入れないときは、接続の切断と資格情報マネージャーの掃除で直ることが多い
- 古い通信方式を有効に戻すのは最終手段。常時有効にはしない
- 複合機のスキャンが失敗するときは、保存先パソコンのパスワード変更を疑う
共有元の機器が止まったときに何が残るかについてはバックアップが「あるのに使えない」3つの型に、社外から社内のファイルを見る方法については社外から社内のファイルを見たい、と言われたらにまとめています。
運営元からのご案内(法人・個人事業主の方へ)
この記事のようなネットワーク・パソコン・サーバーのトラブルや、導入・保守のご相談は、このサイトを運営している株式会社ヒューマンシスコム(千葉市)で承っています。
※ご相談は法人・個人事業主の方に限らせていただいています。個人のお客様からのご相談(ご家庭のパソコンやスマートフォンなど)はお受けしていません。
お問い合わせ(公式サイト)

