「NASに保存したファイルの日付が、なぜか何年も前になっている」。こういう相談は、一見すると小さな話に聞こえます。ファイルの中身は壊れていないし、開くこともできる。仕事は普通に回っています。
ただ、原因を調べていくと、日付がずれていることそのものより、その裏で起きていたことのほうが大事だった、ということがあります。この記事では、ある事務所のNAS(社内のファイル置き場になる機器)で実際にあった事例をもとに、日付がずれる仕組みと、確認のしかたを書きます。
何が起きたか:保存のしかたで、日付が違う
その事務所では、書類をPDFにして、NASに保存する使い方をしていました。印刷の画面でPDFを選び、保存先にNASのフォルダを指定する、というやり方です。
この方法で保存したファイルの「更新日時」が、すべて何年も前の、ある決まった日付になっていました。ところが、いったんデスクトップに保存してから、そのファイルをNASにコピーすると、正しい今日の日付になります。保存のしかたによって日付が変わるので、最初はパソコンの不具合を疑いたくなる現象です。
NASのフォルダを見てみると、ほかにも多数のフォルダの更新日時が、同じ時期のあたりの日付になっていました。つまり、1つのファイルだけの問題ではありませんでした。
原因:NASの時計が、一度も合っていなかった
NASの管理画面を開くと、原因がそのまま表示されていました。時刻の設定のところに「インターネットの時刻サーバーとの同期に失敗した」という趣旨のメッセージ、そしてファームウェアの更新の欄には「外部との通信が確認できませんでした」という表示が出ていました。
NASのネットワークの設定を確認すると、「デフォルトゲートウェイ」と「DNSサーバー」の欄が空になっていました。少し言い換えると、次のような状態です。
| 設定 | 役割(たとえ) | 空だとどうなるか |
|---|---|---|
| IPアドレス | 社内での住所 | 設定されていたので、社内のパソコンからは普通に使えた |
| デフォルトゲートウェイ | 社外へ出るための出口(ふつうはルーター) | 社外(インターネット)へ一切出られない |
| DNSサーバー | 名前から相手の住所を調べる電話帳 | 時刻サーバーなどの名前を住所に変換できない |
社内のファイル置き場としては問題なく使えていたので、誰も気づいていませんでした。しかし、NASはインターネットに出られないため、時刻サーバーと時計を合わせることができず、内蔵の時計がファームウェアに最初から入っている日付のままになっていたのです。
なぜ「直接保存」だけ日付がずれるのか
ここが分かりにくいところなので、仕組みを整理しておきます。
| 保存のしかた | 日付を決めるのは | 結果 |
|---|---|---|
| NASに直接、新しくファイルを作る | NAS本体の時計 | NASの時計がずれていると、ずれた日付になる |
| パソコンで作ったファイルをNASにコピーする | Windowsが元のファイルの日付を書き込む | NASの時計に関係なく、正しい日付になる |
ですから、「コピーすると正しいのに、直接保存するとおかしい」という現象は、NASの時計がずれているサインとして使えます。
現場でやったこと
- 管理画面の表示を確認する。時刻同期の失敗と、「外部との通信が確認できませんでした」の表示を確認しました
- ネットワークの設定に、ゲートウェイとDNSサーバーを入れる。ゲートウェイには事務所のルーターの住所を、DNSサーバーには使える電話帳の住所を設定して保存しました
- 時刻の同期をやり直す。管理画面の時刻の設定から同期をかけ直し、正しい時刻になったことを確認しました
- 時刻サーバーを信頼できるものに指定する。公的機関などが提供している時刻サーバーを指定しました
- 設定のバックアップを取る。ゲートウェイやDNSの設定が今後また抜けてしまわないよう、NASの設定管理の機能で、今の設定を保存しておきました
設定を直したあと、NASに直接ファイルを作って、更新日時が今日の日付になることを確かめて完了です。お客様には「NASが時刻を合わせるためにインターネットにつながれず、中の時計がずれたままになっていました。ネットワークの設定を直して時刻が合うようにしたので、今後保存するファイルは正しい日付になります」と説明しました。
日付のずれより大事だったこと
今回いちばん気になったのは、日付よりも「外部との通信が確認できませんでした」のほうです。NASが外に出られないということは、メーカーが出すファームウェアの更新も確認できない、ということです。時計がずれていたのと同じだけの期間、NAS本体の更新も確認されていなかったことになります。
また、ファイルの日付は「いつの書類か」を判断する手がかりです。日付で並べ替えたり、「この日以降に更新したファイル」を探したりする使い方をしていると、ずれた日付のファイルは探しても出てきません。バックアップの確認で「最新のファイルが入っているか」を日付で見ている場合も、判断を誤るもとになります。
社内のパソコンから普通に使えていると、NASの設定は何年も誰にも見られないことがあります。バックアップが「あるのに使えない」3つの型でも書きましたが、「動いている」と「正しく動いている」は別です。
同じことを防ぐには:5分でできる確認
NASを使っている会社なら、次の確認をしてみてください。管理画面に入れる担当の方か、保守業者に頼めばすぐに済みます。
| 確認すること | 見る場所の目安 | おかしいときのサイン |
|---|---|---|
| NASの現在時刻 | 管理画面の時刻の設定 | 今の時刻とずれている |
| 時刻の同期がうまくいっているか | 同じく時刻の設定 | 同期に失敗したという表示がある |
| インターネットに出られるか | ファームウェア更新の欄 | 外部と通信できないという表示がある |
| ゲートウェイとDNSが入っているか | ネットワーク(IPアドレス)の設定 | 欄が空になっている |
| 直接保存したファイルの日付 | NASに新しくファイルを作ってみる | 今日の日付にならない |
メニューの名前や場所は、NASのメーカーや機種によって違います。分からないときは、機器の説明書かメーカーの案内を確認してください。
なお、ゲートウェイやDNSの設定を変えると、NASの通信のしかたが変わります。社内の誰もがNASに入れなくなる、ということがないよう、設定を変える前に今の値を書き留めておくこと、そして作業は業務時間外に行うことをおすすめします。NASに入れなくなったときの切り分けは、共有フォルダに入れないときの記事にまとめています。
まとめ
- NASに直接保存したファイルだけ日付がおかしいなら、NAS本体の時計がずれている可能性が高い
- コピーしたファイルが正しい日付になるのは、Windowsが元のファイルの日付を書き込むから
- 今回の原因は、NASのゲートウェイとDNSが空で、インターネットの時刻サーバーと同期できなかったこと
- 外に出られないNASは、ファームウェアの更新も確認できていない。日付のずれはそのサインになる
- 管理画面で時刻・同期の状態・更新欄の表示・ネットワーク設定を一度確認しておく
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