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業務ソフトが動かなくなるのが怖い、更新のたびに再起動を求められて仕事が止まる。そうした理由で、Windowsの更新を止めたまま使っている会社は少なくありません。
先に正直に書いておくと、更新を止めているお客様から「止めていたせいで困った」という相談を受けたことは、今のところほとんどありません。それでも私は、この状態をずっと不安に思っています。この記事では、更新を止めたくなる気持ちが分かる実例と、それでも止めっぱなしにしないほうがよい理由、現実的な落としどころを書きます。
更新を止めたくなる気持ちは、よく分かる
更新を止める会社を責める気にはなれません。更新したことで実際に困る場面を、私自身が現場で見ているからです。
更新のあと、PINでサインインできなくなった
あるお客様のパソコンで、Windowsの月例更新が入って再起動したあと、朝の画面に「問題が発生したため、PINを使用できません」と表示されるようになりました。いつもの4桁の数字でサインインできないので、使っている方からすれば、朝いちばんにパソコンに入れなくなったのと同じです。
このときは、サインインの方法をPINからパスワードに切り替えれば入ることができました。調べていくと、「高速スタートアップ」という機能と、更新による再起動の組み合わせが原因と考えられる、よく知られたパターンでした。高速スタートアップは電源を切るときにパソコンの状態を保存しておき、次の起動を速くする機能ですが、これが更新時の再起動と重なると、PINの仕組みが使う鍵の情報とずれてしまうことがあります。
対処としては、パスワードでサインインしたうえで高速スタートアップを無効にしました。やっかいだったのは、同じパソコンで一度では終わらず、更新のあとに再発したことです。原因が分かっていても、使う側からすれば「また更新でおかしくなった」と感じます。こういう経験が重なると、更新そのものを止めたくなるのは自然なことです。
止めていて困ったことは、今のところない
一方で、更新を止めているお客様のところで、そのせいで業務が止まった、被害に遭った、という経験は今のところありません。毎日の仕事は普通に回っています。
ここが、この問題のいちばん難しいところだと思っています。更新すると目に見えるトラブルが起きることがあるのに、更新しないことのリスクは目に見えないのです。目に見えるほうを避けたくなるのは当然で、「止めていても困っていない」という実感が、止めっぱなしの状態を長引かせます。
それでも不安に思っている理由
更新を止めて困らないのは、困る瞬間が「攻撃されたとき」だからです。そして、その瞬間が来たときには、もう手遅れになっています。
Windowsの月例更新の多くは、見つかった弱点(脆弱性)をふさぐためのものです。更新を止めるということは、世の中に知られている弱点を開けたままにしておくことです。攻撃する側は、公開された弱点を順番に試してきます。社内の1台がそこから入り込まれると、ネットワークでつながった他のパソコンやサーバーにも広がります。ランサムウェアの現場に立ち会った記事で書いたとおり、一度広がると、数日単位で業務が止まることもあります。
もうひとつ、時間の問題もあります。Windows 10のサポートは2025年10月に終了しました。サポートが終わったWindowsには、新しく見つかった弱点をふさぐ更新そのものが提供されません。「更新を止めている」のではなく「もう更新が来ない」状態のパソコンが、社内に残っていないかも確認が必要です。
止めるなら「全部」ではなく「期間を決めて」
更新を完全に止めるか、何も考えずに全部入れるか、の二択で考える必要はありません。Windowsの更新には大きく2種類あり、分けて扱うことができます。
| 更新の種類 | 中身 | おすすめの扱い |
|---|---|---|
| 品質更新(毎月の更新) | 弱点をふさぐセキュリティの修正が中心 | 止めない。遅らせるとしても数日〜数週間まで |
| 機能更新(年に1回程度の大型更新) | Windowsのバージョンそのものが上がる | 業務ソフトの対応を確認するまで延期してよい |
業務ソフトが動かなくなる心配が大きいのは、主に機能更新のほうです。毎月のセキュリティ更新は入れつつ、大型の機能更新だけは業務ソフトの会社が対応を表明してから入れる。これが、私がお客様に勧めている落としどころです。
Windowsには、更新を一時的に止める機能や、更新の適用を一定期間遅らせる設定があります。これを使えば、「永久に止める」のではなく「確認が済むまで待つ」という運用ができます。止めるときは、いつまで止めるのか、誰が再開するのかを決めておくことが大切です。決めずに止めると、そのまま何年も止まり続けます。
更新でトラブルが起きたときの備え
更新を続けるなら、トラブルが起きたときに慌てない準備もしておきます。
- 先に1台で試す。全台一斉ではなく、業務への影響が小さい1台に先に入れて、数日様子を見てから残りに広げます
- 更新が来る日を知っておく。Windowsの月例更新は、日本時間ではおおむね毎月第2水曜日に公開されます。その週は、何か起きたら更新を疑う、と覚えておくだけで切り分けが速くなります
- PIN以外のサインイン方法を必ず控えておく。今回のようにPINが使えなくなっても、パスワードが分かっていれば入れます。PINしか覚えていない状態がいちばん危険です
- 業務ソフトの会社に対応状況を聞いておく。「Windowsのどのバージョンまで動作確認済みか」を確認しておけば、機能更新をいつ入れてよいか判断できます
特に3つ目は、今回の件で強く感じたことです。PINでしかサインインしたことがなく、パスワードを忘れている方は意外に多くいます。その状態でPINが使えなくなると、パソコンに入る手段がなくなってしまいます。
(PR)更新とあわせて入口の対策を
セキュリティソフトは、更新の代わりにはなりません。弱点をふさぐのはあくまで更新です。そのうえで、不審な添付ファイルや偽サイトを入口で止める対策を重ねておくと、更新が遅れた期間のリスクを下げられます。個人事業主の方や、自宅から仕事に使うパソコンの対策の一例です。家庭向けの製品なので、法人として使う場合はライセンスの条件を事前に確認してください。
まとめ
- 更新でトラブルは実際に起きる。更新を止めたくなる気持ちには理由がある
- 止めていて困った経験は今のところない。ただしそれは、困る瞬間が攻撃されたときで、その時点では手遅れだから
- 毎月のセキュリティ更新は止めず、大型の機能更新だけを業務ソフトの確認が済むまで延期する
- 止めるなら期限と再開する人を決める。1台で先に試し、PIN以外のサインイン方法を控えておく
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