「いつも見ているPDFが、急に開けなくなった。エラーのOKを押しても、また同じエラーが出て、何もできない」。以前、あるお客様からこういう連絡をいただきました。毎日の仕事で使っている書類なので、開けないと業務が止まってしまいます。
原因は、ファイルが壊れていたことでも、パソコンの故障でもありませんでした。ブラウザ(Chrome)に入っていた「Adobe Acrobat」の拡張機能が、PDFの表示を横取りしていたことでした。この記事では、何が起きていたのか、現場でどう見分けてどう直したのか、そして同じことを防ぐために何をしておくとよいかを書きます。
何が起きたか:OKを押すたびに、同じエラーが出続ける
このお客様は、業務で使っている会員制のWebサイトにログインし、そこで作られる書類のPDFをChromeで開いて確認・印刷していました。いつもどおりPDFのリンクを押したところ、次のような動きになりました。
- 別のウィンドウが開き、「Acrobat」の名前が入ったPDFの画面(編集・変換・電子サインなどのボタンが並んだ画面)が表示される
- 読み込み中の印がしばらく回る
- 「エラーが発生しました」「この文書を開くことができません。壊れているか、ファイル形式がサポートされていません。」という画面が出る
- OKを押すと、また読み込みが始まり、同じエラーが出る
この繰り返しが止まらず、操作ができない状態でした。お客様は「ファイルが壊れた」と思われていましたが、同じ書類はそれまで普通に開けていました。画面の右上には、Googleの翻訳の小さな画面も出たままになっていて、余計に見づらくなっていました。
原因:Acrobatの拡張機能がPDFを横取りしていた
見分ける決め手になったのは、PDFが表示されているウィンドウのアドレス欄でした。普通、ChromeでPDFを開くと、アドレス欄にはそのPDFがあるWebサイトのアドレスが表示されます。ところがこのときは、アドレスが「chrome-extension://」で始まり、そのあとに本来のPDFのアドレスが続く形になっていました。
「chrome-extension://」で始まるのは、Chromeに追加した拡張機能(後から入れる追加機能)が画面を表示しているしるしです。調べると、その拡張機能はAdobeの公式の「Adobe Acrobat」拡張機能でした。つまり、PDFはChromeが自分で開いていたのではなく、Acrobatの拡張機能が代わりに開こうとしていたわけです。
では、なぜ拡張機能だと開けないのか。このお客様が見ていたPDFは、ログインした状態で、その都度サイト側で作られる書類でした。ログインの情報を持ったまま取りに行けば正しいPDFが返ってきますが、拡張機能の側からもう一度取りに行くと、PDFではなくエラーのページや空のデータが返ってくることがあります。それを受け取った拡張機能は「壊れている」「形式がサポートされていない」と判断します。さらに、エラーのOKを押すと拡張機能がもう一度取りに行くので、同じエラーが繰り返されていた、というのが今回の流れです。
| 見えていたこと | 意味 |
|---|---|
| アドレス欄が「chrome-extension://」で始まる | Chromeではなく拡張機能がPDFを表示している |
| 画面に「Acrobat」の名前と編集・変換のボタン | Adobe Acrobatの拡張機能の画面 |
| 「壊れているか、ファイル形式がサポートされていません」 | 拡張機能がPDFとして正しいデータを受け取れていない |
| OKを押すと、また読み込みが始まる | 拡張機能が取り直しを繰り返している |
現場でやったこと
まずはエラーの繰り返しから抜ける
OKを押すと繰り返しが続くので、OKは押さずに、PDFのウィンドウごと閉じます。キーボードの「Alt」と「F4」を同時に押すか、「Ctrl」と「W」を同時に押すと、ウィンドウやタブを閉じられます。それでも閉じられない場合は、タスクマネージャーからChromeを終了します。
拡張機能を止めて、Chrome本来の表示に戻す
- Chromeのアドレス欄に「chrome://extensions」と入力して、拡張機能の一覧を開く
- 「Adobe Acrobat」の拡張機能のスイッチをオフにする(業務で使っていなければ削除してもかまいません)
- アドレス欄に「chrome://settings/content/pdfDocuments」と入力し、PDFの開き方を「Chromeで開く」にする
- 翻訳の小さな画面は、アドレス欄の翻訳のマークから「このサイトは翻訳しない」を選んで出ないようにする
- もう一度、書類のPDFを開いて、表示と印刷ができることを確かめる
拡張機能そのものを残しておきたい場合は、拡張機能の設定で「PDFをAcrobatで開く」をオフにする方法もあります。今回はこの手順で、書類のPDFがChromeの標準の表示機能で、問題なく表示・印刷できるようになりました。
お客様には、止めたのはChromeの中の追加機能だけで、パソコンに入っているAcrobat本体(PDFを編集するソフト)はそのまま使えることをお伝えしました。「Acrobatを消してしまって大丈夫なのか」という不安は、こういうときに必ず出てきます。何を止めて、何は残っているのかをはっきり伝えることが、現場では大切だと感じています。
同じ症状のときに確かめること
「PDFが開けない」という相談は多いのですが、原因はさまざまです。今回のような拡張機能が原因かどうかは、次の順に確かめると見分けやすくなります。
| 確かめること | 見る場所 | こうなっていたら |
|---|---|---|
| PDFの画面のアドレス | アドレス欄 | 「chrome-extension://」で始まるなら拡張機能が表示している |
| Acrobatの拡張機能が有効か | chrome://extensions | 有効ならオフにして試す |
| PDFの開き方の設定 | chrome://settings/content/pdfDocuments | 「Chromeで開く」か「ダウンロード」かを確認 |
| 拡張機能なしで開けるか | シークレットウィンドウ | 開けるなら拡張機能が原因の可能性が高い |
| パソコン全体のPDFの既定のアプリ | Windowsの既定のアプリの設定 | Edge・Acrobat・Chromeのどれになっているか |
| ほかのパソコンでも起きるか | 同じ書類を別のパソコンで | 同じ拡張機能が入っていないかも確認 |
シークレットウィンドウでは、多くの拡張機能が動かない状態でページを開けます(ただし、ログインはし直しになります)。そこで開けるなら、原因は拡張機能のどれかにかなり絞れます。
同じことを防ぐために
拡張機能は便利ですが、知らないうちに増えていきます。ソフトを入れたときに一緒に追加されたり、「入れると便利です」という案内に従って追加したりして、入れた本人も覚えていないことがあります。今回の対応でも、確認項目のひとつとして「ほかのパソコンにも同じ拡張機能が入っていないか」を挙げました。1台で起きたことは、同じように準備したほかのパソコンでも起きる可能性があるからです。
- ときどき拡張機能の一覧を見る。「chrome://extensions」を開いて、使っていないもの・入れた覚えがないものはオフにしておく
- 業務の書類は「どのアプリで開くか」を決めておく。会員制のサイトの書類はChromeの標準の表示で開く、編集が必要なものだけAcrobatで開く、のように分けておくと迷いません
- パソコンを入れ替えたとき、ブラウザの設定や拡張機能も一緒に引き継がれることがある。新しいパソコンで急に起きた場合も、まず拡張機能を疑う
- エラーの画面で「OK」を押し続けない。同じエラーが繰り返されるときは、閉じて相談するほうが早く片づきます
パソコンを入れ替えたときに、データ以外に何を引き継ぐ必要があるかは、パソコンを入れ替えたら、会計ソフトが「前と違う」|データ以外に引き継ぐべきものに書きました。ブラウザの起動時の設定が原因で困った例としては、再起動しても消えないサポート詐欺の対処も参考になると思います。
まとめ
- 「壊れているか、ファイル形式がサポートされていません」と出ても、ファイルが本当に壊れているとは限らない
- PDFの画面のアドレスが「chrome-extension://」で始まっていたら、拡張機能が表示している
- ログインした状態でその都度作られる書類は、拡張機能からは正しく受け取れないことがある
- 対処は、OKを押さずに閉じる → 拡張機能をオフ → PDFの開き方を「Chromeで開く」にの順
- Acrobat本体は止めなくてよい。止めるのはChromeの中の追加機能だけ
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