「複合機でスキャンしたのに、パソコンに届かない」。前日の夕方までは普通に届いていたのに、朝から急に届かなくなった、というご相談でした。
調べていくと、原因はパソコンの起動時に出た「通信を許可しますか」という確認画面でした。この画面が閉じられたことで、スキャンを受け取るソフトが止まっていたのです。しかも、その確認画面が出るようになったきっかけは、前日に私たちが入れた遠隔サポート用のソフトでした。自分たちの作業が引き金になった例として、正直に書いておきます。
何が起きたか
あるお客様の事務所で、1台のパソコンに、複合機からのスキャンが届かなくなりました。前日の夕方まではデスクトップの「scan」フォルダーにきちんと届いていて、翌朝から届かなくなっています。
利用者の方に伺うと、「スキャン用のソフトは使っていない」とのことでした。実際には使っていたのですが、そのソフトはパソコンの起動と同時に裏で動き、画面には何も出さない作りだったため、使っている意識がなかったのです。
最初に確かめるのは「どうやって届いているか」
複合機からパソコンへスキャンを届ける方法は、大きく分けて2つあります。どちらで届いているかによって、調べる場所がまったく違います。
| 届け方 | しくみ | 届かないときに疑う場所 |
|---|---|---|
| 共有フォルダーに保存 | 複合機がパソコンの共有フォルダーに直接ファイルを書き込む | 共有の設定、パソコンのログイン情報、Windowsのファイアウォール |
| 受け取り専用のソフト | パソコンで常駐する複合機メーカーのソフトが受け取り、決まったフォルダーへ移す | そのソフトが動いているか、ソフトの通信が許可されているか |
このパソコンは、複合機メーカー(シャープ)の受け取り用ソフトでスキャンを受けていました。一方で、パソコンには昔使っていたスキャン用の共有フォルダーも残っていました。ただし、そちらの最終更新は1年以上前で、今は使われていません。最初にこの古い共有フォルダーを調べ始めると、見当違いの方向に進んでしまうところでした。
共有フォルダーに保存する方式で届かなかった例は複合機からパソコンの共有フォルダーにスキャンできないに書いています。今回は方式が違うので、原因もまったく別でした。
原因|「許可しますか」を閉じたら、ソフトが止まった
受け取り用ソフトが動いているかを確かめると、動いていませんでした。ソフトの記録(ログ)を見ると、その日の朝、次の順に出来事が記録されていました。
- 前夜に休止状態にしたパソコンを、朝に再開した
- 受け取り用ソフトが自動で起動した
- 起動時に、ソフトが「ファイアウォールの許可」を確認する画面を出した
- その画面が「ユーザーによって取り消された」
- 直後にソフトがエラーで終了し、スキャンを待ち受けない状態になった
では、なぜ前日までは出なかった確認画面が、この日に出たのか。理由は前日の夕方に私たちが入れた遠隔サポート用のソフトでした。
ネットワークが1つ増えると、許可が足りなくなる
Windowsのファイアウォール(外からの通信を通すか通さないかを決める仕組み)は、つないでいるネットワークを「パブリック(公共)」と「プライベート(自宅・社内)」に分けて、それぞれ別々に許可を管理しています。
このパソコンの社内LANは、もともと「パブリック」として扱われており、受け取り用ソフトの許可も「パブリック」の分だけがありました。そこへ遠隔サポート用のソフトを入れたことで、「プライベート」扱いのネットワークが1つ新しく加わりました。すると受け取り用ソフトは、起動時に「プライベートの許可が足りない」と判断して、許可を求める画面を出すようになったのです。
利用者の方から見れば、朝いきなり見慣れない確認画面が出たことになります。閉じてしまうのは自然な反応です。そして閉じた結果、ソフトが止まり、スキャンが届かなくなりました。
現場でやったこと
- 受け取り用ソフトを、利用者の画面で起動し直した:遠隔の操作用の窓口からそのまま起動すると、利用者の画面に表示されない場所で動いてしまいます。そこで、一度だけ動く予約の仕組みを使って、利用者の画面でソフトを起動しました。使った予約はすぐに削除しています。
- 確認画面で「許可」を押してもらった:起動と同時に出た確認画面で、利用者の方に「許可」を押していただきました。これでプライベート用の許可が追加され、ソフトがスキャンを待ち受ける状態に戻りました。
- 実際にスキャンして確かめた:複合機からテストでスキャンし、デスクトップの「scan」フォルダーに届くことを確認しました。
同じ受け取り用ソフトを使っていて、遠隔サポート用のソフトを入れたほかのパソコンでも、初回の起動時に同じ確認画面が出る可能性があります。お客様には「シャープの確認画面が出たら『許可』を押してください」とお伝えしました。
同じことを防ぐには
新しいソフトを入れたら、裏で動くソフトの許可も見る
今回の反省点はここです。遠隔サポート用のソフトに限らず、VPN(社外から社内につなぐ仕組み)のソフトなど、ネットワークを追加するタイプのソフトを入れると、ほかのソフトの通信の許可が足りなくなることがあります。私たちは、遠隔サポート用のソフトを入れるときに、複合機の受け取り用ソフトがあるかを確認し、あればプライベート用の許可もあわせて確認する手順を加えました。
「スキャンが届かない」ときの確認の順番
| 順番 | 確認すること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 届け方は共有フォルダーか、受け取り用ソフトか | 調べる場所がまったく違う。古い設定が残っていると見誤る |
| 2 | 最後に届いたのはいつか | その前後に何を変えたかを思い出す手がかりになる |
| 3 | 受け取り用ソフトが動いているか | 画面に出ないソフトは、止まっていても気付かない |
| 4 | 見慣れない確認画面が出なかったか | 閉じたことでソフトが止まっている場合がある |
| 5 | 複合機の宛先がそのパソコンになっているか | パソコンの入替や番号の変更で宛先がずれることがある |
複合機やプリンターは、パソコン側の番号が変わっただけで届かなくなることもあります。その例はプリンターが急にオフラインになった記事に書いています。
確認画面は、閉じる前に「何のソフトか」を見る
今回の確認画面は、普段使っている複合機のソフトが出した正規のものでした。ただ、確認画面の中には、正体の分からないソフトが出すものもあります。何でも「許可」を押せばよい、というものではありません。
私がお客様にお願いしているのは、見慣れない確認画面が出たら、押す前に画面に書かれたソフトの名前を見ることです。普段使っている機器のメーカー名なら許可して問題ないことが多く、分からなければ閉じずにそのまま担当者に連絡してください。写真を1枚撮って送っていただくだけでも、判断がずっと早くなります。
お客様への説明
お客様には、次のようにお伝えしました。「昨日、遠隔サポート用のソフトを入れた影響で、スキャンを受け取るシャープのソフトが、パソコンの起動時に『通信を許可しますか』という確認を出すようになっていました。今朝この確認が閉じられたため、受け取りソフトが止まり、スキャンが届かなくなっていました。ソフトを起動し直して『許可』を押していただいたので、今後は確認なしで受け取れます」。
原因がこちらの作業にあったことは、そのままお伝えしています。きっかけを隠すと、次に同じことが起きたときにお客様が判断できなくなるからです。
まとめ
- スキャンが届かないときは、まず届け方(共有フォルダーか、受け取り用ソフトか)を特定する
- 受け取り用ソフトは画面に出ずに裏で動くことが多く、止まっていても気付きにくい
- ネットワークを追加するソフトを入れると、ほかのソフトの通信の許可が足りなくなることがある
- 起動時の確認画面を閉じると、ソフトがそのまま止まる場合がある
- 見慣れない確認画面は、押す前にソフトの名前を見る。分からなければ担当者へ
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