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お客様から「パソコンの様子がおかしい」「ファイルが開けない」と連絡が来たとき、私が原因を聞くより先に伝えることがあります。
「LANケーブルを今すぐ抜いてください。Wi-Fiなら切ってください」
詳しい状況を聞くのは、そのあとです。順番を逆にすると、話している数分の間に被害が広がることがあるからです。
ただ、この指示には「なぜ電源ではなくLANなのか」という理由があります。ここを知らないと、とっさに間違った操作をしてしまいます。
とっさに電源を落としたくなるが、それは違う
異変を見たとき、多くの人が最初にやろうとするのが電源を切ることです。気持ちは分かります。動いているものを止めたい。
ですが、これは避けたほうがいい操作です。理由は2つあります。
- メモリ上の情報が消える。そのとき何が動いていたか、どこと通信していたかは、電源が入っている間だけメモリに残っています。落とすと消えます。あとで原因を調べるときに、手がかりが減ります
- 止まる保証がない。電源を切っても、次に起動したときに続きから動くように作られているものがあります。「止めたつもり」で終わることがあります
覚えやすい形にすると、こうです。
「線は抜く。電源は落とさない。」
LANを抜くと、何が止まるのか
| LANを抜く | 電源を落とす | |
|---|---|---|
| 他の端末への広がり | 止まる | 止まる |
| 外部との通信(情報の持ち出し) | 止まる | 止まる |
| 共有フォルダ・NASへの被害 | 止まる | 止まる |
| その端末内での動作 | 続くことがある | 止まる |
| あとで原因を調べる材料 | 残る | 消える |
LANを抜いても、その端末の中では処理が続くことがあります。そこだけは電源を落とすほうが確実です。
ただ、被害の大きさで考えると、失うものが大きいのは「他へ広がること」のほうです。1台がやられるのと、社内全部とバックアップまでやられるのとでは、話がまったく違います。だから、まず切り離しを優先します。
抜く順番
| 順 | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 異変が出ている端末のLAN | 発信源を止めるのが最優先 |
| 2 | つないでいる外付けHDD・USBメモリ | バックアップを守れる可能性が残る |
| 3 | サーバー・NASのLAN | 共有データを守る |
| 4 | 他のパソコンのLAN | 感染範囲がまだ分からないため |
2番目を忘れる人が多いです。USBでつなぎっぱなしの外付けHDDは、パソコンから「見えている」ので被害の対象になります。ここを抜けるかどうかで、復旧できるかが決まることがあります。
無線の場合
ノートパソコンでLANケーブルを使っていない場合は、Wi-Fiを切ります。ただし確実に切れる方法を選んでください。
- 機内モードにする(いちばん確実)
- 本体の無線スイッチがあれば切る
- 設定画面からWi-Fiをオフにする
慌てているときは、画面の操作よりルーター側の電源を抜いて事務所全体の無線を止めるほうが早いこともあります。全員の業務は止まりますが、被害が広がるよりはるかにましです。
「抜いていいのか分からない」ときの判断
現場でためらわれるのが、基幹の業務システムが動いているサーバーです。「抜いたら業務が止まる」と考えてしまう。
私の考えはこうです。
- 感染が疑われる状況なら、業務を止めてでも切り離す。数時間止まるのと、データを失って数日止まるのとでは、比べるまでもありません
- 判断に迷って10分考えるくらいなら、抜いてから考える。抜いたことで壊れるものはありません
- 抜いた結果「何でもなかった」なら、つなぎ直せば済みます。空振りは損ではありません
抜いたあとにやること
- 画面をスマートフォンで撮る。どんな表示が出ていたかは、あとで種類を特定したり相談したりするときの材料になります
- 時刻をメモする。「何時ごろ、誰が、何をしたら」を書き留めておく。記憶は驚くほど早く曖昧になります
- そのパソコンを使わない。確認のつもりで操作すると、状況が変わります
- 保守業者・専門業者に連絡する。ここでようやく落ち着いて相談できます
やってはいけないこと
- 再起動する:状況が変わるだけで、良くなることはありません
- バックアップ用のHDDをつないで中身を確認する:最後の1台を失う典型的なパターンです
- 他のパソコンから共有フォルダを開いて確認する:確認した側も巻き込まれます
- 自分でネット上の復号ツールを探して実行する:偽物が出回っています
- 黙っている:社内で共有しないと、他の人が同じ添付を開きます
事前に決めておくと、迷わない
実際に起きたときは、誰でも慌てます。だから事前に紙1枚にしておくのが効きます。
- 異変を見つけたら、まずLANを抜く/Wi-Fiを切る(電源は落とさない)
- 外付けHDD・USBの線も抜く
- 画面を写真に撮る
- 連絡先:(保守業者の電話番号を書いておく)
- 社内への周知:(誰が、どうやって)
これをパソコンの近くか、事務所の見える場所に貼っておく。慌てている人が読める場所にあるかどうかが、すべてです。
(PR)感染の入口を減らしておく
LANケーブルを抜くのは、感染してしまったあとの初動です。その前の段階として、不審なメールの添付やリンクを入口で止める仕組みを入れておくと、この初動を使う場面そのものが減ります。個人事業主の方や、自宅から仕事に使うパソコンの対策の一例です。家庭向けの製品なので、法人として使う場合はライセンスの条件を事前に確認してください。
まとめ
- 線は抜く、電源は落とさない(原因を調べる材料を残すため)
- 抜く順番は異変のある端末 → 外付けHDD → サーバー → 他の端末
- 無線なら機内モードが確実。迷うならルーターの電源を抜く
- 迷ったら抜く。空振りしても、つなぎ直せば済む
- 手順を紙1枚にして、見える場所に貼っておく
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