ネットバンキングにログインできない|原因は電子証明書の期限切れでした

社内の仕組み

「ネットバンキングにログインできない。振り込みができなくて困っている」。こういう連絡は、たいてい急ぎです。支払いの期日が迫っていたり、月末だったりするからです。

先日対応したあるお客様のケースでは、原因は電子証明書の有効期限切れでした。パソコンの故障でも、銀行の障害でもありません。1年に1回の更新を、誰も覚えていなかっただけです。この記事では、そのときの切り分けと対応、そして「年に1回だけの作業」を会社としてどう忘れないようにするかを書きます。

電子証明書とは:パソコンに入れておく「会社の身分証」

法人向けのネットバンキングの多くは、IDとパスワードだけでなく、電子証明書という仕組みを使ってログインします。電子証明書は、決められたパソコンにだけ入れておく「身分証」のようなものです。IDとパスワードが漏れても、証明書が入っていないパソコンからはログインできないので、なりすましを防ぐ効果があります。

ただし、この身分証には有効期限があります。今回の銀行では1年でした。期限が切れると、IDやパスワードが正しくても、ログインできなくなります。

何が起きたか:ログイン画面から先に進めない

お客様の状況は、ログイン画面で「電子証明書でログイン」を選んでも認証が通らず、ネットバンキングの業務がまったくできない、というものでした。パソコン自体は普通に動いていて、インターネットも問題なく見られます。

原因の候補と、見分け方

電子証明書でログインできないとき、私は次の4つを候補に置いて確認します。今回は1番目でしたが、ほかの3つもよくあるので、まとめておきます。

原因の候補確認すること対処の方向
証明書の有効期限切れ(今回の原因)証明書の有効期限の日付証明書を更新する
ブラウザに古い証明書の情報が残っているブラウザをすべて閉じてから開き直したかブラウザを全部閉じて再アクセス。だめならCookieの削除と証明書の情報のリセット
パソコンの入れ替え・再インストール後に証明書を入れていない最近パソコンを替えたり、初期化したりしていないか銀行の「パソコンを変更したとき」の手順で設定し直す
第二パスワードの入力ミス・ロック何回か続けて間違えていないかロックされている場合は銀行所定の解除手続き

ポイントは、「パソコンを最近替えましたか」と「ブラウザを全部閉じましたか」を最初に聞くことです。どちらも電話で確認でき、該当すれば見るべき場所がすぐに決まります。どちらにも当てはまらなければ、有効期限を確認します。

「ブラウザを全部閉じる」は、銀行側の案内にも書かれている基本の手順です。画面の右上の×で1つのウィンドウを閉じただけでは、別のウィンドウが残っていることがあります。タスクバーを見て、同じブラウザがほかに開いていないかも確かめてください。

現場でやったこと

証明書の有効期限を確認すると、数日前に期限が過ぎていました。そこで、次の手順で更新しました。

  1. 証明書の更新ツールを起動する。このお客様のパソコンには、銀行が用意している証明書更新用のショートカットがデスクトップにありました
  2. 更新する利用者を選ぶ。一覧に出てくる利用者のIDから、期限が切れていたものを選んで、証明書を更新しました
  3. ブラウザをすべて閉じる。古い情報が残らないよう、開いていたブラウザを全部閉じました
  4. 銀行のサイトからログインし直す。ログイン画面で電子証明書によるログインを選び、第二パスワードを入力しました
  5. ログインできたことを確かめる。ログイン後の画面で、認証の種類が「電子証明書」になっていることまで確認しました

作業そのものは短時間で終わります。難しいのは作業ではなく、期限が来ていることに誰も気づかないことのほうです。

お客様には「ログインに使う電子証明書には1年の期限があり、それが過ぎていたためにログインできませんでした。更新して、今は普通にログインできます。この更新は毎年必要なので、来年の同じ時期にまた同じ手順でお願いします」と説明しました。

なぜ「年に1回」は忘れられるのか

毎日やる作業は、体が覚えます。毎月やる作業も、月末の段取りに組み込まれます。ところが年に1回の作業は、前回やった人も、やり方も、時期も、誰も覚えていません。担当者が替わっていれば、なおさらです。

中小企業の現場で、同じように「年に1回」「数年に1回」で止まりやすいものを挙げると、次のようなものがあります。

更新が必要なもの切れると起きること
ネットバンキングの電子証明書ログインできず、振り込みや残高の確認ができない
会社のドメイン名(ホームページ・メールのアドレス)ホームページが見られず、メールも届かなくなる
セキュリティソフトのライセンス定義ファイルが更新されなくなる
業務ソフトの保守契約・年分の更新新しい年度や制度の変更に対応できない

ドメイン名の更新については、会社のホームページを持つとき、最初に決める3つでも触れています。どれも「切れてから気づく」と、業務が止まるものばかりです。

同じことを防ぐには

電子証明書の期限切れを防ぐために、私がお客様にお願いしていることは3つです。

  1. 期限の日付を、会社の予定表に入れる。個人の手帳ではなく、担当が替わっても見える場所に入れます。期限の1か月前と1週間前に通知が来るようにしておくと安心です
  2. 更新の手順を1枚にまとめておく。どのショートカットを起動するか、どのIDを選ぶか、更新後に何を確認するか。今回の手順をそのまま紙にしておけば、来年は迷いません
  3. パソコンを入れ替えるときの作業リストに「電子証明書」を入れる。証明書は決められたパソコンに入っているものなので、入れ替えると新しいパソコンで設定し直す必要があります

3つ目は特に大事です。パソコンを替えた日にネットバンキングだけ使えない、ということが起きないよう、入れ替えの準備の段階で確認しておきます。入れ替えのときに、データ以外に引き継ぐべきものは、パソコンを入れ替えたら会計ソフトが「前と違う」にまとめました。

最後にひとつ注意です。「電子証明書の期限が切れます」「更新してください」といった内容のメールは、銀行をかたる偽物の可能性もあります。更新は、メールのリンクからではなく、いつも使っている更新ツールや、ブックマークしてある銀行の正しいサイトから行ってください。メールの見分け方は、フィッシングを現場でどう見分けているかで書いています。

まとめ

  • 法人向けネットバンキングの電子証明書には有効期限があり、今回の銀行では1年ごとの更新が必要だった
  • ログインできないときは、期限切れ・ブラウザの古い情報・パソコンの入れ替え・第二パスワードのロックの4つを疑う
  • 最初に「パソコンを替えたか」「ブラウザを全部閉じたか」を確認し、当てはまらなければ期限を見る
  • 年に1回の作業は必ず忘れる前提で、会社の予定表と手順書に残す
  • 更新を促すメールのリンクは使わず、いつもの更新ツールか正しいサイトから更新する

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