「共有フォルダーに入れません」という連絡は、私たちの仕事でいちばん多い相談のひとつです。原因の多くはパソコン側にありますが、今回は少し珍しいケースでした。NASは動いている。管理画面も開く。それなのに共有フォルダーだけが開かない、という状態です。
NAS(ネットワークにつなぐファイル保存用の機器)の本体は生きているのに、中の「ファイル共有の機能」だけが止まっていました。似た症状は、停電や瞬間的な電源断のあとに起こり得ます。現場で何を確かめ、どう戻したかを書いておきます。
何が起きたか
あるお客様から、週明けの朝に「パソコンから共有フォルダーが開けない」と連絡がありました。エクスプローラーで共有フォルダーを開こうとすると「ネットワーク エラー」と表示され、中に入れません。
遠隔でつないで確認すると、次のような状態でした。
- パソコンからNASへの疎通確認(ping)は通る
- NASのWeb管理画面も普通に開ける
- しかし共有フォルダーだけが開けない
「機器がつながっていない」のでも「電源が落ちている」のでもありません。ここが今回の分かりにくいところでした。
「つながる」と「共有が使える」は別の話
NASは、ひとつの箱の中で複数の機能を動かしています。管理画面を出す機能と、ファイルを共有する機能は、それぞれ別の「入口」(ポート番号)で受け付けています。そこで、パソコンからNASの入口をひとつずつ叩いて、どれが応答するかを調べました。
| 確かめたこと | 結果 | 読み取れること |
|---|---|---|
| NASへの疎通(ping) | 応答あり | NASの電源は入っていて、ネットワークにもつながっている |
| Web管理画面の入口 | 応答あり | 管理画面の機能は動いている |
| ファイル共有の入口 | 接続を拒否 | 共有の機能だけが受け付けていない |
| パソコン側の記録 | 「リモート システムに拒否されました」 | パソコンからの要求は届いているが、相手が断っている |
ポイントは、共有の入口が「応答なし」ではなく「拒否」だったことです。途中で通信が消えているのではなく、NASまでは届いたうえで断られている。つまり、NASの中で共有の機能が動いていないことを示しています。
ほかの原因を先に消しておく
NASの不調と決めつける前に、似た症状を出す原因を2つ確認しました。
1. 別の機器が同じ番号を使っていないか
ネットワーク上の住所にあたる「IPアドレス」を、別の機器が重ねて使っていると、NASのつもりで別の機器に話しかけてしまうことがあります。そこで、応答している機器の固有番号(MACアドレス)と、管理画面に表示される製品名を確かめました。どちらもNAS本体のもので、番号の重複ではありませんでした。番号の重複については別の記事で詳しく書いています。
2. パソコン側の設定が変わっていないか
Windowsの更新で、共有フォルダーへの接続方法の決まりが厳しくなり、古い機器につながらなくなることがあります。パソコン側の共有に関する設定を確認しましたが、問題になる設定は見当たりませんでした。
NASの記録に残っていた「再起動」
次にNASの管理画面でログ(動作の記録)を見ました。すると、連絡をいただく数日前の早朝に、NASが一度起動し直していた記録がありました。起動の直後に、ディスクの組み直し(RAIDの再構成)が完了し、ディスクの状態は「正常」と記録されていました。
誰かが操作した記憶はないとのことでしたので、停電や瞬間的な電源断などが考えられます。ただ、この点はまだ確認中で、原因を断定はしていません。分かっているのは、この再起動のあと、共有の機能だけが正常に立ち上がらなかったということです。管理画面は動いていたため、外から見ると「NASは元気」に見えていました。
現場でやったこと
- 管理画面から再起動を試した:ところが停止の途中で固まってしまい、5分以上たっても止まりませんでした。管理画面は「再起動中」の表示のまま、疎通確認も通り続けていました。
- 本体の電源ボタンで止めて、入れ直した:電源ボタンを短く押して停止させ、改めて起動しました。長押しで強制的に切る方法ではなく、機器に「止まってください」と伝える押し方です。
- 共有の入口が開くのを待った:起動から約1分で、ファイル共有の入口が応答するようになりました。
- 中身を確かめた:共有フォルダーが開き、ファイルが元どおり残っていることを確認しました。ディスクの状態も正常のままです。
- NASの番号が変わらないようにした:このNASは、ルーターから自動で番号をもらう設定で使われていました。同じタイミングで、ルーターが自動で配る番号の範囲を見直すことになったため、範囲を変えてもNASの番号が変わらないよう、ルーター側に「この機器にはこの番号を渡す」という予約の登録を追加しました。
番号の配り方を変えると、自動で番号をもらいながら番号を指定して使っている機器(プリンターなど)が迷子になることがあります。次の作業として、ほかのパソコンから共有に入れるか、番号で指定して使っている機器がほかにないかを確認しています。プリンターで同じことが起きた例はこちらの記事にあります。
同じことを防ぐには
「pingは通るのに共有だけ開かない」ときの見方
| 症状 | まず疑う場所 | やること |
|---|---|---|
| NASへの疎通も通らない | 電源・ケーブル・番号の変更 | 本体のランプ、LANケーブル、ルーターの配布状況を確認 |
| 疎通は通る、管理画面も開く、共有だけ開かない | NASの共有の機能 | NASのログで再起動や異常を確認し、NASを再起動する |
| 1台だけ共有に入れない | そのパソコン | 保存された接続情報やログイン情報を見直す |
| NASの管理画面から再起動しても止まらない | NAS本体 | 本体の電源ボタンで停止(長押しの強制停止は最後の手段) |
1台だけ入れないときの切り分けは共有フォルダに入れないときの記事にまとめています。今回のように全員が入れず、しかもNASは生きているように見えるときは、NAS側の機能の不調を疑ってください。
停電に備えるなら、UPS(無停電電源装置)
再起動の原因が停電だった場合、お客様にはUPS(無停電電源装置)の設置をおすすめしています。UPSは、停電したときにしばらく電気を供給して、そのあいだにNASを安全に止めるための装置です。NASは、急に電源が切れることを最も嫌う機器のひとつです。今回はデータもディスクも無事でしたが、毎回そうとは限りません。
NASのログを、ときどき見る
今回、NASの記録からは、再起動から連絡をいただくまでの数日間、共有の機能が止まっていた可能性があります。NASの管理画面には、いつ起動したか、ディスクの状態はどうかが記録されています。月に一度でも見ておくと、「知らないうちに再起動していた」ことに早く気付けます。NASの時計がずれて記録の日時が狂っていた例はこちらに書きました。記録は、正しい時刻で残っていてはじめて役に立ちます。
NASだけに頼らない
NASは便利ですが、1台の箱です。止まれば全員の仕事が止まります。今回は再起動で戻りましたが、ディスクが壊れていたら話は別です。別の場所にもう一つ写しを持っておくことが、いちばんの保険です。バックアップの考え方はバックアップが「あるのに使えない」3つの型で詳しく書いています。
お客様への説明
お客様には、次のようにお伝えしました。「共有フォルダーに入れなかったのは、NAS本体の『ファイル共有の機能』だけが止まっていたためです。数日前の早朝にNASが一度再起動しており、そのときからこの機能がうまく動いていなかったようです。NASを再起動したところ元どおり使えるようになりました。データは消えておらず、ディスクの状態も正常です。停電が原因だった場合は、UPSの設置をおすすめします」。
まとめ
- NASがつながることと、共有が使えることは別。管理画面が開いても、共有の機能だけが止まっていることがある
- 共有の入口が「応答なし」ではなく「拒否」なら、NASの中の機能を疑う
- 決めつける前に、番号の重複とパソコン側の設定を消しておく
- NASのログで、知らないうちの再起動がないかを見る
- 管理画面から止まらないときは本体の電源ボタン(短押し)。長押しは最後の手段
- 停電が疑われるならUPS。NASは急な電源断を嫌う
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