「ルーターを新しくしてもらったら、外から防犯カメラの映像が見られなくなった」というご相談をいただくことがあります。事務所のパソコンやスマートフォンはこれまでどおりインターネットにつながっているし、社内では録画装置の映像もちゃんと見える。それなのに、外出先のスマホアプリからだけ映像が出てこない。カメラ本体を疑って現地を見に行っても、カメラは何ともありません。
最近も、ある事業所様で同じ案件がありました。防犯カメラそのものではなく、「外から中の機器につなぐための通り道」がルーターの入れ替えで消えていたのが原因でした。仕組みが分かると予防もできるので、現場で何を見て、何をしたのかをまとめておきます。
「社内では見えるのに、社外から見えない」が最大のヒント
まず押さえておきたいのは、症状の切り分けです。防犯カメラの映像が見られないと聞くと、多くの方はカメラの故障や録画装置の不具合を心配されます。ですが、今回のように「社内のパソコンからは映像が見えるのに、社外のスマホからだけ見えない」という場合、カメラや録画装置は正常に動いていることがほとんどです。
録画装置が壊れているなら、社内から見ても映りません。社内から見えるということは、機器は動いていて、映像も流れている。問題は「外と中をつなぐ出入口」にある、とほぼ絞り込めます。この出入口を管理しているのが、事務所のインターネット回線につながっているルーターです。
そして今回、その少し前に起きていた出来事がひとつありました。ルーターの入れ替えです。時系列を並べると、「ルーターを新しくした翌日から、外から見られなくなった」。この一致が、原因を考えるうえで決定的でした。
原因は、ルーターの「通り道の設定」が引き継がれていなかった
外出先のスマホから社内の録画装置につなぐには、インターネット側からの通信を、ルーターが「これは中のこの機器あてだ」と判断して中へ通してあげる必要があります。この設定を、一般にポート開放(ポート転送)と呼びます。会社の受付にたとえると分かりやすいかもしれません。
ふつう、外から来た人(通信)は受付(ルーター)で止められ、勝手に中へは入れません。これはセキュリティ上、正しい動きです。ただし「録画装置あての来客だけは、この部屋へ通してよい」という取り次ぎのルールをあらかじめ受付に登録しておけば、その通信だけは中へ届きます。外からカメラを見られるのは、このルールがルーターに入っているおかげです。
ここで問題になるのが、ルーターの入れ替えです。ルーターを新しい機種に交換すると、こうした取り次ぎのルールは自動では引き継がれません。回線につなぎ直してインターネットが使えるようになると、一見すると「入れ替え完了」に見えます。事務所のパソコンもスマホも問題なく使えます。しかし、外から中の機器へ通すための特別なルールは、新しいルーターには白紙のまま。だから社内は無事なのに、社外からカメラだけが見えなくなるのです。
今回のケースも、旧ルーターに入っていた録画装置あての取り次ぎルールが、新しいルーターにひとつも入っていませんでした。外から実際に接続を試すと、まったく応答がない状態でした。カメラは動いているのに、受付で全部止められていた、というわけです。
現場でやったこと
やることは決まっていました。旧ルーターに入っていたのと同じ取り次ぎルールを、新しいルーターにもう一度登録することです。ただし、闇雲に設定すると別の不具合を招くので、順番に確認しながら進めました。
最初に、社内の録画装置が今どの住所(IPアドレス)で、どの通信の種類を待ち受けているのかを確認します。録画装置は、映像を見るための通信をいくつかの決まった経路で受け付けています。外から見るには、その経路すべてを通してあげないといけません。ひとつでも抜けると、つながったように見えて映像だけ出ない、といった中途半端な状態になります。
次に、新しいルーターの管理画面で、外からの通信をその録画装置あてに通すルールを登録しました。あわせて、外からの通信を制限しているルーター側のフィルター(防火扉のようなもの)の並び順も確認します。ルールを追加しても、手前の防火扉で先に止められていると通りません。この「登録したのに評価される順番で負けている」という見落としは、現場で意外とよく起きます。順番も含めて通るように直しました。
最後に、実際に社外の回線から録画装置へ到達できるかをテストし、応答が返ってくることを確認しました。設定した本人が「入れたはず」で終わらせず、外から実際に届くところまで見て初めて完了とします。作業前の状態と作業後の設定は、元に戻せるように記録してから触っています。
同じ症状でありうる、もう2つの原因
今回はルーターの取り次ぎ設定が原因でしたが、「ルーターを替えたら外からカメラが見えない」ときは、ほかに2つ確認しておきたい点があります。切り分けの参考にしてください。
外から見るときの「宛先」が変わっていないか
外出先のアプリは、事務所の回線に割り当てられた住所(グローバルIPアドレス)を頼りにアクセスします。回線やルーターの契約状況によっては、入れ替えのタイミングでこの住所が変わることがあります。住所が変われば、アプリが今まで見ていた宛先は「もう誰もいない場所」になり、当然つながりません。アプリ側の接続先を、変更後の住所や、住所が変わっても追従する仕組み(DDNSと呼ばれます)に合わせて見直す必要があります。
録画装置の「出口」が古いルーターのままになっていないか
録画装置のような機器には、「外へ出るときはこのルーターを通る」という出口の設定が入っています。ルーターを入れ替えても、機器側のこの出口設定が古いルーターの住所を指したままだと、機器から外への応答がうまく返りません。社内からは見えるのに社外からの応答だけおかしい、というときは、機器側の出口設定も確認の対象に入れます。
同じことを防ぐには
入れ替え前に「公開設定」を書き出しておく
ルーターの入れ替えで引き継がれないものの代表が、この「外から中へ通すための設定」です。防犯カメラだけでなく、外部からアクセスできるようにしてある機器があれば、同じことが起こります。入れ替えの前に、今のルーターにどんな取り次ぎルールが入っているかを書き出して保存しておくと、新しいルーターへの登録がそのまま写すだけで済みます。旧ルーターを撤去してしまうと、後から設定を確認できなくなります。外す前が勝負です。
「外から見ている機器」を一覧にしておく
防犯カメラ、勤怠の打刻機、社外から使う共有の保存装置(NAS)など、「外から中の機器につないでいるもの」は、ふだん意識されません。だからこそ、ルーター交換のような大きな作業の前に一覧があると、確認漏れが防げます。社内で使うだけの機器と違い、これらは入れ替えのたびに設定のやり直しが必要になる、と覚えておいてください。
機器の入れ替えは「つながった」で終わらせない
インターネットにつながった時点で作業完了、としてしまうと、今回のような「社外からだけ見えない」が後日発覚します。発覚するのはたいてい、外出先で映像を見たくなった緊急のとき。そうならないよう、入れ替えの当日に、外から見る機能まで一度テストしておくことをおすすめします。防犯カメラは「いざというときに見られること」が価値なので、ここは省かないほうが安心です。
安全に外から見るなら、通り道を開けっ放しにしない方法もある
ここまでは「ルーターに取り次ぎルールを入れて外から見る」やり方を説明しました。手軽ですが、ひとつ知っておいてほしいことがあります。この方法はインターネットに向けて機器の入口を常に開けておくことになるため、パスワードが弱いと外部から狙われる入口にもなり得ます。防犯のための機器が、逆にリスクになってしまっては本末転倒です。
より安全に社外から社内の機器を見たい場合は、入口を開けっ放しにするのではなく、社外と社内を専用のトンネルでつなぐ仕組み(VPN)を使う方法があります。いったん社内につながってしまえば、あとは社内にいるのと同じように機器を見られます。手間は少し増えますが、入口をインターネットにさらさずに済みます。どちらが向いているかは、見たい機器の数や使う人数、求めるセキュリティの水準で変わります。判断に迷うときは、導入している警備会社や保守業者に相談してください。
まとめ
- 「社内では見えるのに社外からだけ見えない」なら、カメラ本体よりルーター(出入口)の設定を先に疑う
- ルーターを入れ替えると、外から中へ通すための取り次ぎルール(ポート開放)は自動では引き継がれない
- 取り次ぎルールは、必要な通信の経路をひとつ残らず登録し、手前のフィルターの順番で負けていないかも確認する
- ほかに回線の住所(グローバルIP)の変更、機器側の出口設定が旧ルーターのままの2点も疑う
- 入れ替え前に今の公開設定を書き出して保存し、当日に外から見る機能までテストする
- 常時開けておくのが不安なら、VPNで安全につなぐ選択肢もある
社外から社内のファイルや機器につなぐ話は社外から社内のファイルを見たいときの、安全なつなぎ方にもまとめています。パソコンや機器を入れ替えたときに「前と設定が違う」で困る話はパソコンを入れ替えたら会計ソフトが「前と違う」もあわせてご覧ください。
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